「緩和ケア」と「がんリハ」の連携でがん患者さんの「活きる」を支える。

「緩和ケア」と「がんリハ」の連携でがん患者さんの「活きる」を支える。

「緩和ケア」と「がんリハ」の連携でがん患者さんの「活きる」を支える。

まず、三次中央病院がこの取り組みに至った経緯は?

佐伯 現在のがん治療は、「手術」「抗がん剤治療(化学療法)」「放射線治療」「リハビリテーション」の4本柱で行われています。がん患者さんに起きてくるいろいろな症状をコントロールしていく中で、日常生活が支障なく送れるよう身体機能を維持するためのリハビリも広い意味で「緩和ケア」の中に含まれるのですが、平成25年までは、医師と看護師からなる「緩和ケアチーム」のスタッフで行うことは難しく、その都度、必要な方にリハビリを処方するという状態でした。

平成27年10月から必要な方に確実にリハビリを提供できる体制として、「緩和ケアチーム」と理学療法士、作業療法士、言語聴覚士からなる「がんリハチーム」が合同で会議(合同カンファレンス)を毎週金曜日に行うことにしました。

平成28年4月から認定看護師が専従になって、入院のがん患者さんを毎日全員把握しています。がんリハの必要な方を、それぞれのチームが持っている情報を統合して、合同カンファレンスの場で検討して、決定し、処方医にその場で依頼することができます。

それぞれのお立場での役割や携わる思いをお聞かせ下さい。

佐伯 合同カンファレンスを始めて、一緒に検討することで、リハビリが必要な方にはもれなく提供できるようになったことが、何より大きな成果だと思います。

新濱 看護師として28年4月から緩和ケアチームの専従スタッフになりました。入院中の全がん患者さんにスクリーニング(簡便な検査で特定の人を選び出すこと)を毎日行って、がんリハを結びつけていく役割をしています。看護師は治療や症状観察はできるのですが、安全に動く方法とか、どういうことを行ったらQOLを上げられるかとかいう時には、リハビリの力に助けてもらっています。

上野 理学療法士の私は、常に患者さんが今どの時期にいて、何を目的に治療がされているか、またどのような思いや希望があるのか把握し、その中で理学療法士として何ができるのかを考えつつ、リハビリに取り組んでいます。患者さんの状況を理解し、生活や思いに寄り添うことが、がんリハには一番大切です。理学療法士は救命(延命)行為を行えません。でも、「活きる」こと、つまり「その人らしく活きる」ことを支えることはできると信じています。

両チームのすばらしい連携には、何か秘訣があるのでしょうか

新濱 がんリハチームと連携するようになってより多職種と積極的にコミュニケーションを図ることが増えてきているように思います。

樫本 カンファレンスは週に1回ですが、普段から密に話をするようにしています。顔の見える関係ができていることで連携がスムースになったと感じます。また、病院の規模もちょうどいいのではないでしょうか。

がんリハを行った患者さんにはどんな変化がありましたか。

新濱 リハビリの視点から、工夫してもらいたいことを患者さんや家族に伝えてもらうことで、動けるようになったり、今できていることが続けられるようになります。特に、排泄動作については理学療法士の介入が重要です。指導してもらうことで、私たちも安全に介助が行えています。また、リハビリとして、外を散歩することで気分転換をされたり、できなかったことができるようになられたりすることを、スタッフが一緒に喜ぶ姿を目にすると、患者さんに寄り添っておられることがよく分かります。

樫本 医師の目から見ても、今何かを改善しなければいけないということはないくらいシステマティックに進められていますし、いろいろ提案もしていただいています。熱心すぎるくらいですよ。入れ込み過ぎて壊れないかという心配をするほどです。

患者さんとともに真実に向き合う

さらに良いケアを続けていくためには、何が大切でしょうか。

佐伯 緩和ケアが終末期のイメージになっていることがあります。緩和ケアチームが患者さんや家族の方に介入するときには、がんが再発転移した後が自然の流れだと思いますが、それをネガティブにとらえる人は、緩和ケア=終末期というイメージになっているのです。患者さんや家族に「亡くなるケア」と感じさせてしまっている可能性もあります。そこは、我々も自覚しておかないといけませんね。また、リハビリに過剰な期待をする方が結構いらっしゃいます。リハビリが、患者さんに現実から目をそらさせてしまうことになって、真実に向き合うチャンスを奪ってしまっていることになることもあります。それはよくないことだと思います。現状維持か、具合が悪くなるしかないというところで、患者さんや家族から過剰な期待を寄せられることはリハビリ専門職にとってはすごくつらいところだと思います。患者さんの生活の質を上げるためにどうしたらいいかをみんなが考えてしっかり対応することでしょう。

新濱 もうちょっと病棟の看護師もリハビリに取り込んでいければいいなと思っています。そうしたらもっと、リハビリが必要な方を見つける目が多くなるのではないかと思います。

両チームのレベルアップをはかり、専門性を高めよう

こういうシステムが県内に広がっていくために、助言や提案をお願いします。

佐伯 リハビリ専門職がやっていることをきちんと尊重して、なおかつリハビリ専門職からも尊重される緩和ケアチームでありたいと思います。

レベルの高い緩和ケアチームであれば、リハビリスタッフから相互交流の提案をされるという流れになると思います。私たちもリハビリのほうから提案があったのです。

お互いの専門性を認め合うことが、緩和ケアチームのレベルの向上につながり、がんリハもよりよいものになっていくと思います。そのためにも、各病院が患者さんの生活の質にしっかり目を向けることです。

緩和ケアチームに最も欠けているのはメンタルケアだと思います。常勤の精神科医がいないところがほとんどです。今後、メンタルケアや鎮痛を含めた体の症状の緩和も、専門性がもった緩和チームが増えてくるとリハビリスタッフも一緒に協同しやすくなり、がんリハが広がっていくのではないでしょうか。

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