テクニカルスタンダード―新人療法士のための脳画像の基礎知識―

テクニカルスタンダード―新人療法士のための脳画像の基礎知識―

コンピューター技術の発展によって、多くの臨床現場で画像は容易に触れることができるものでしょう。しかし、多くの新人理学療法士の皆さんは、「難しそう」「さっぱりわからない」等の理由で画像をみることを敬遠してないですか? 最初にはっきり示しておきますが、理学療法を展開する上で画像がすべてではありません。むしろ、理学療法の目標である「生活」という視点で考えると画像は一見「生活」に直結しないほんのわずかな情報です。しかし、画像をみる力を有していれば、まだ皆さんが気づいていない患者さんの潜在的な可能性や理学療法を実施する上で配慮すべきリスク、より良い理学療法を展開するヒント等、臨床上多くの有益な情報を与えてくれるのも事実です。

本稿では、脳卒中(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)を発症された患者さんに関わる上で、知っておくべき脳画像の基礎知識について紹介します。

脳画像には大きく分けてCTとMRIの2種類があります。脳の病気が疑われる場合には真っ先にCTをとるのが一般的です。なぜかというと、MRIに比べて検査時間が短いからです。CTでは、出血が白く写るため出血性病変(脳出血やクモ膜下出血)の有無がわかります。CTの結果、出血が見つからなければ梗塞性病変(脳梗塞)が疑われMRI撮影が行われます。

上図に検査の一般的な流れを簡単に書きましたが、MRI検査が出血性病変の患者さんにまったく実施されないわけではありません。例えば、CT検査にて脳出血の診断となった患者さんでも、典型的な出血でない場合や若年成人で異常血管(Arteriovenous malformation: AVM)等の存在が疑われる場合には早期にMRI検査が行われることがあります。その際、知っておくべき知識として、血管を対象とする検査には、MRI検査のひとつであるMRAや造影剤を使用するCTA等があることです。担当となった患者さんが受けている検査について、主治医がどのような目的で指示を出しているかが少しずつ見えてきましたか? ここまでお話すれば、急性期の脳卒中患者さんに理学療法を実施する上で、脳画像を把握せずに介入することがいかに恐ろしいことかが少しずつわかってきたかと思います。

おそらく皆さんの頭を混乱させる大きな要因がMRIの撮像法の違いだと思います。「T1」「T2」という言葉からしてややこしいですが、ポイントを整理すればそう難しいことではありません。多くの教科書に「T1強調画像」「T2強調画像」「FLAIR強調画像」「拡散強調画像」「T2*強調画像」の特徴が整理されてますし、多くの情報を羅列するだけでは皆さんの画像アレルギーは解決しないでしょうから、ここでは臨床に直結する最重要な情報のみをまとめます。

その他、T2(* T2スター)強調画像は陳旧性の微小出血病変(microbleeds)の検出に優れています。

ここまでに、MRIの撮像法の違い等いろいろと書きましたが、病気の診断をするのは医師の仕事で、理学療法士にとって最も大事なことは病変の局在を解剖学的構造と照らしあわせ、その症状を呈している要因や回復の可能性について読み取ることです。そうすることで、発症早期には一見同じような症状を呈していたとしても、その後の改善の可能性や時期を検討する上で重要なヒントを与えてくれます。

本稿では画像に関する基礎知識を整理しましたが、臨床場面では画像所見と一致しない症状を呈す患者さんもいます。最初に述べたように、あくまで『画像は患者さんについて考えるためのひとつの材料』ということは忘れないようにしましょう。

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