INTERVIEW―NICUの理学療法―

INTERVIEW―NICUの理学療法―

INTERVIEW―NICUの理学療法―

県立広島病院
佐々木 寛美 先生

県立広島病院NICUの概要について教えてください

県立広島病院(以下、当院)では、2009年に成育医療センターを開設し、妊娠前から、妊娠、出産、小児、成人に至るまで、あらゆるライフステージの患者さんの治療・ケアにあたっています。新生児科としては、現在、NICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室)12床、GCU(Growing Care Unit:継続保育室)18床(写真1)を有し、ハイリスク出産に備えたり、低出生体重児や新生児疾患に対応しています。新生児科には年間約450人の入院があり、そのうち60人程度が1,500g未満で産まれた極低出生体重児(VLBW)で、さらにその50%程度が1,000g未満の超低出生体重児(ELBW)です。

写真1:GCU

NICUに関わるきっかけは何でしたか?

当院リハビリテーション科では、1996年からNICU・GCUでの理学療法介入を開始しました。私が当院に就職した当時は、NICU・GCUに入院中で理学療法が必要な児は、院外から診療援助で来てくださっていた理学療法士の先生に診ていただいていました。 先生は、赤ちゃんにとても愛情深く関わっておられ、かつ、的確に評価をされている姿がとてもステキで、「自分も先生のように赤ちゃんを診ることができるようになりたい」と思ったことが、私が小児について深く学びたいと思ったきっかけです。 そして、現在は当院の2名の理学療法士(写真2)が、他科と兼任しながらではありますが、NICU・GCUの理学療法を行っています。

写真2:NICU・GCU担当の吉川先生(左)と佐々木先生(右)

どのような児が理学療法の対象となるのでしょうか?

当院では、ELBWの児は全員、出生予定日前後に運動発達評価を実施しています。その他、出生体重にかかわらず、いらつきや筋や関節に硬さ等を認める児・遺伝子疾患(染色体異常)・低酸素性虚血性脳症(HIE)・脳室周囲白質軟化症(PVL)・脳出血・脳MRIで所見を認めた児等、評価を必要とする児・継続的なフォローが必要になりそうな児は、全身状態・修正月齢(出産予定日を基準にした月齢)に応じて適宜処方があり、理学療法を開始しています。 ここ数年では、年間40名程度の処方があり、そのうちの約65%がELBWの児です(図)。

図:県立広島病院NICUの対象疾患

詳細なデータはありませんが、最近は新生児仮死で出生後、低体温療法を行った児の処方(評価依頼含む)が増えてきている印象があります。 NICUではどのような理学療法をされているのですか? NICUの理学療法については、2002年に“NICUにおける呼吸理学療法ガイドライン”が公表されたこと、2011年に日本理学療法士協会が理学療法診療ガイドラインの小児領域・脳性麻痺の理学療法を示した中に、NICUに関連することが少し触れられている程度で、研修会や情報交換の場も少ないのが現状ですが、当院では、主に運動機能面の評価、運動・発達の促通を行っています。 評価は、筋緊張・原始反射・各種反応や自発運動の観察等、総合的に判断していき、その結果、評価のみで終了となる児もいますし、継続的なフォロー、ご家族への運動指導(写真3)、外来フォローへ移行となる児もいます。 運動は、受動的なものではなく、できるだけ児が自ら動けるように、反応等を利用して能動的な動きを引き出すようにプログラムを組んでいます。 その他、必要な児にはポジショニングを検討したり、抱っこの仕方をご家族に指導することもあります。

写真3:ご家族への運動指導

理学療法士が関わることでどのような効果がありますか?

NICUで理学療法士が関わることにより、ある程度の予後予測(運動機能がメイン)と現在の成熟度を把握することができます。そのため、何らかの支援が必要な(必要になってくるであろう)児に、早期の介入が可能となります。ただ、早期介入といっても、早ければ早いほど良いというわけではありません。当院NICUでは外的ストレスをできる限り最小限にした環境のもとで、赤ちゃんの成長や発達を促していこうとするケア(ディベロップメンタルケア)に取り組んでいます(写真4)。理学療法士としても過度なストレスを与えないよう、介入時期の検討(満期に近くなった頃)や実施時間の調整等、心がけています。

写真4:NICU(光刺激軽減のため、照度を落としています)

NICUの理学療法に関してどのような課題がありますか?

前述したように、NICUの理学療法に関するエビデンスの蓄積は少なく、介入効果についての報告はあるものの、長期的効果については不明瞭であり、今後の課題であると思います。 当院に限ると、もう少しマンパワーがあれば、現在の当院の基準ではスクリーニングの対象にならず、後々、発達の遅れを示し外来紹介となっている児もカバーできるようになる可能性もあるかと思っています。 NICUを卒業する児は年々増え、それに伴い継続的な介入を必要とする児も同様に増加し、さらに、発達という観点からみると、退院後も比較的長期に渡って経過を追う必要があります。しかし、その後の受け入れ先も限られており、特に“明らかな疾患はないものの、運動発達に遅れをみせている児”の行き先がほとんどないのが現状で、今後関わってくださる場所が増えるといいなと思っています。 NICU・GCUに入院している児のご家族は、現状も予後的なことも含めて、計り知れない不安でいっぱいです。さらに、お母さんは罪悪感・罪責感を抱くことが本当に多いです。 最近は、児の状態は落ち着いていても、家族背景・家庭環境の問題で家に帰ることのできないケースも増えてきており、院内の医師や看護師、MSWだけでなく、地域の保健師、保育士、訪問看護・リハビリ等、さまざまな関係機関との連携・情報共有がさらに必要となってきています。

今後の抱負を教えてください

赤ちゃんは、笑った顔だけでなく、泣きそうになった顔、小さい手足を動かしている様子、本当にかわいいです。赤ちゃんにはたくさん愛情を注いで、そしてご家族には少しでも安心して赤ちゃんとの生活を送ることができるように、理学療法士として少しでもお手伝いができるといいなと思っています。

《県立広島病院総合周産期母子医療センターの沿革》

1995年 母子総合医療センター開設

1999年 総合周産期母子医療センター指定

2009年 成育医療センター開設(生殖医療科・産科・新生児科・小児科・小児外科・
     小児腎臓科・小児感覚器科・婦人科・歯科・口腔外科)

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