SPECIAL INTERVIEWー地域で必要とされる「ジェネラリスト」という専門性ー

SPECIAL INTERVIEWー地域で必要とされる「ジェネラリスト」という専門性ー

地域のニーズに応える病院理念

私は、現在アマノリハビリテーション病院(以下、当院)の療養外来課に所属し、管理業務と臨床業務を行うプレイングマネジャーとして仕事をしています。臨床業務では、療養外来課の文字通り医療療養病床や外来の患者を担当し、その他にも地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)の患者、通所リハビリテーション(以下、通所リハ)の利用者に理学療法を行うこともあります。ざっくり言うと、療養外来課の理学療法士はどんな患者、利用者でも診ます。当院には、療養外来課以外にも、発達外来課と回復期課があり、対象者の年齢、疾患ともに幅広いのが当院の特徴のひとつだと思います。発達外来課では、脳性麻痺、低出生、重症心身障がい、発達障がいにより運動が不器用な子供たちを対象とした外来での小児リハビリテーション(以下、小児リハ)を行っています(写真1)。また、当院の訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)は、医療保険で対応しているため、神経筋疾患や脳性麻痺の方、人工呼吸器を装着し医療的ケアの必要性が高い方を対象としています (写真2)。当院の訪問リハ利用者の疾患一覧(表1)の通り、介護保険で行われる訪問リハの事業所とは対象者像が異なります。さらに、平成25 年からは外来患者を対象とした心臓リハビリテーション(以下、心リハ)もスタートしました。心リハ指導士の資格を有した理学療法士が2 名在籍しており、医師、看護師、トレーナー、臨床工学技士などの多職種で協働しています。回復期を中心としたリハ病院にも関わらず、このような「多様性」を持つのは当院理事長の「地域から求められたらやりましょう」という確固たる方針があってのことだと思います。

様々な患者を担当することを通して幅広い視点を学びました

当院は元々、療養型病院でしたが、時代の流れに沿って回復期リハ病棟ができました。また、地域からの要望もあり訪問リハ、小児リハや心リハがスタートしました。時代に即して病院の機能が変わり、職員の業務内容も大きく変わっていきました。今思えば私自身その中で一生懸命目の前の患者に向き合ってきたことが幅広い視点を持つ重要性に気づかせてくれたのだと思います。私は大学卒業後に入職して以来、ずっと当院で働いているので、これまではあまり今置かれた環境が普通とは違うという自覚はありませんでした。このように話をして、言葉にすることで様々な疾患や病期に対応できる『ジェネラリスト』であることの意味や重要性を認識できる気がします。

ジェネラリストとしての誇りとスペシャリストへの引け目

私自身、理学療法士として患者を横断的に診ることの楽しさを感じつつも、専門的に深く診れてないというコンプレックスを感じることもありました。例えば、脳血管疾患の専門病院に勤務する若手の理学療法士の取り組みを見て落ち込むこともありました。ただ、少しずつ気づいたのは、何か一つの分野を深く追求する理学療法士もいれば、幅広い知識・技術・経験を持ち、どんな対象者であっても効果的な理学療法をマルチに提供できる理学療法士も必要ではないかということです。看護師の世界ではジェネラル・ナースという言葉を耳にすることがあります。私たちの世界でも、『ジェネラル』を専門分野とし、『ジェネラリスト』として活躍する人が増えるといいですよね。もちろん専門的な知識を追求することへの努力を否定する気はありません。私や職場の仲間も苦手な分野に直面した時は、得意なスタッフに相談したり、休みの日のフォローを行ってくれた人にアドバイスを求めたりすることで自分に足りないことを補うようにしています。さらに、専門的な研修に参加するなど、知識の習得に努めています。

ジェネラリストの視点を持った人材を育てるうえで大事にしていること

幅広く診ることのできる人材となるには、何より様々な患者への理学療法を経験することが一番大事だと思います。そのためにもマネジメントを行う立場である私たちが新人に多くの経験をしてもらえるような教育体制を整え、OJT を通して実際に体験する機会を積極的に作ることが必要になります。新入職員の多くは、まずは回復期リハ病棟で学ぶことを希望します。今の卒前教育で学んできたことと回復期リハ病棟の業務内容が合致しているのかもしれませんね。回復期リハ病棟で経験していく中で在宅に興味を持つ理学療法士は増えていく印象です。また、患者が退院した後に通所リハや訪問リハで関わるスタッフから実際の在宅生活を送っている様子をフィードバックしてもらい、在宅生活や地域での様子を知る経験があると、回復期リハ病棟の若いスタッフには今後の業務に役立つのではないかと思います。

もう1 点大事にしていることは、「自分が行ったことを振り返る時間を持ってもらうこと」です。リハビリテーションという領域は言うまでもなく個別性が非常に高い分野です。多くの症例を担当し、一人ひとり個別性の異なる方への理学療法を行う中で試行錯誤を重ねることが自分自身へのフィードバックとなり、理学療法士の力になるのだと思います。同時に自分が経験した症例を言葉や文字にして他人に伝えていくことも大切ですよね。

地域で愛されるために広い知識を持つことの専門性を高める

地域の中には高齢者だけでなく、障がいを持った子供、神経筋疾患や脊髄小脳変性症などのいわゆる難病を患った方もたくさん生活されています。当院の訪問リハの対象者像は、一般の事業所とは異なるとお話しましたが、その甲斐もあってか他事業所では訪問が困難なケースについて、必要としている地域の関係機関から当院を選んでいただいていると思います。

筋萎縮性側索硬化症を患った方が圧迫骨折をして入院リハが必要となることや、脊髄小脳変性症を患った方が転倒して骨折し、その後に入院リハが必要となることもあります。その際に、なんの抵抗もなく担当できるのはジェネラリストの強みだと自負しています。疾患で対象者を選別しないところは、私自身の今の働き方を愛する理由の一つです。

これからも地域の皆さんに心から安心してリハビリテーションを受けていただけるよう、幅広い知識を持つことの(ジェネラリストとしての)専門性を高めていきたいと思います。

ページトップ