【対談】地域包括ケアの中で理学療法士に期待すること

【対談】地域包括ケアの中で理学療法士に期待すること

高橋:広島市は広島市高齢者施策推進プランを進める中で、平成28年度より地域包括ケア推進課を設置して、2025年を見据えた地域包括ケアシステムの基盤づくりを目標に事業を展開し、スピード感を持って成果を上げています。広島市の地域包括ケアの中心的な役割を務められ、ご活躍されている荻原課長の地域包括ケアシステムに対するお考えを教えてください。

 

荻原:地域包括ケアシステムの概念は高齢者の方、一人一人が人生の最後までできるかぎり住み慣れた地域で生活を営むことができるように医療、介護、予防、住まい、そして、生活支援、そういった日々の暮らしに欠かせない要素を地域ごとに包括的に提供していく仕組みだと思っています。言い換えれば、地域ごとにご当地システムをみんなの意識を共有して、包括的に進めていくことだと思っています。私がいろいろなところでお話させてもらう時は「チーム広島」で、広島独自の地域包括ケアシステムを作っていこうと伝えています。

 

高橋:それぞれの町で高齢者の暮らしを支えるために、多職種が関わりながらその地域を作っていくということですね。


荻原:そうですね。まずご本人の自分がどうありたいのかとか、どのように生きていきたいのかというところがすべての基盤になると思います。「システム」という表現がわかりにくくさせているかもしれませんが、制度というよりも人と人がつながって、地域を作っていくということだと思っています。そのシステムを作っていく主体として、専門的なサービスを提供する専門職が連携することは欠かせません。また、地域住民の方にもわが町のことと捉えて主体的に地域づくりに参加してもらう、そして、積極的に主役になってもらうことが欠かせないと思います。

 

高橋:地域住民も専門職も「自分のこととして」ということが大事ですね。広島市の実情について教えてください。


荻原:広島市は今、第6期(平成27年度〜29年度)の高齢者施策推進プランに基づいて地域包括ケアシステムの基盤を作っている段階です。第7期のプラン(平成30年度〜)では「地域包括ケアシステムづくりの推進と深化」をスローガンに進めていきたいと考えています。
直近で言えば、平成29年4月に介護予防・日常生活支援総合事業(いわゆる総合事業)がスタートしました。その中では介護予防の概念を単純に要介護状態にならない、要介護状態になることを防ぐということではなく、地域で暮らし続けるための介護予防という広く、かつより深まった概念として総合事業を進めています。そのために欠かせないものが、入口のケアマネジメントであり、そして、サービス提供であり、出口を意識した地域づくり、地域の通いの場の3点セットで、多職種に協力してもらいながら進めている状況です。

 

高橋:これから広島市がどのような方向に向かっていくのかということを教えてください。


荻原:おかげさまでリハビリ専門職、特に理学療法士の方には行政と地域包括支援センターと連携をしてもらって、取り組みは進んでいると思います。この7月にも介護予防に携わる専門職のための基礎研修会を開催しましたが、全体で450名という参加者があり、特に理学療法士の方には相当多数の方に参加いただいて、関心の強さと熱意を改めて感じることができました。これを一過性のものとするのではなく、流れをより強いものにして進めていく必要性があると思っています。
そのためには日々のコミュニケーションが必要です。それは行政と専門職という関係性はもちろんですが、専門職同士のコミュニケーションも非常に重要と思っています。日々やり取りさせてもらっている中で、すごく感心して頼もしく思っているのはリハビリ専門職の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3職種が、密に協同して事に当たっておられることです。
それが端的に結果として出たのが、「がんばれ!!カープ ひろしま百歳体操」(広島市のオリジナル介護予防体操DVD)だと思っています。そういった流れを今後より大事にしていかないといけないと思っています。
地域包括ケアシステムを作っていくためには戦略が欠かせません。そのためには専門職から見て、この地域がどう映っているのか、行政サイドからデータの分析も含めて、しっかりコミュニケーションをとりながら進めていかないといけません。
とは言っても、組織的な連携関係というのは、まだ日が浅い段階だと思います。
やりとりの中で日々お互いが「ここはもう少し変わればいいね」とか、それぞれ思うことがあると思います。それは行政としてヒアリングも含めて、聞かせてもらいながら、少しずつ出てきた課題を潰して、より良いものにしていくことがこれから必要になってくると思います。

高橋:私たちも地域包括ケアシステムを推進していくためには「人材育成」と「行政との関係」が大事だと思っています。行政と関係を持つことで一緒に人材育成の研修を行ったり、ひろしま百歳体操のDVDも作ることができました。私たち理学療法士にとっても大きな経験になりました。これから地域の実情に応じた地域包括ケアシステムを構築していく中で理学療法士に期待することについて教えてください。


荻原:リハビリ専門職の中でも理学療法士はまさに一番基礎、根柢の部分を担っている職種だと思っています。そういう意味では様々な場面で介護予防や健康づくりに力を貸していただきたいと思っています。
理学療法士の方には3つの役割をお願いしたいと思っています。1つ目はサービス提供の主体としてのプレイヤー、2つ目は地域包括支援センターや行政に必要な助言と支援を行うアドバイザー、3つ目は地域住民の動機付けとやる気に火をつけるモチベーターです。この3つの役割が非常に重要だと考えていて、これまでも協力していただいていますが、さらに強く意識していただき、ともに取り組みを進めていきたいと思います。
9月に開催された中国ブロック理学療法士学会のテーマが「分科と包括」でした。専門性を高めていくことと、包括という横軸で視野を広く持って地域づくりにも関与していくということだったと思います。そのテーマは非常に重要だし、大きいと感じました。そういったことを意識してもらうことは行政としてありがたいことですし、重要だと思います。

高橋:私たちも人材育成を行う中で理学療法士は対象者に個別に関わることが多い反面、地域や広い視点で関わる経験が少ないように思います。これからしっかり経験を積んでいく中で包括的な視点を持った人材を増やしていきたいと思います。今日はありがとうございました。

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