INTERVIEWー臨床・教育・研究の融和ー

INTERVIEWー臨床・教育・研究の融和ー

臨床・教育・研究の融和

公益社団法人 広島県理学療法士会
副会長 甲田 宗嗣

臨床、教育、研究、そして教育へ

これまで理学療法士として約20年間、「臨床」、「教育」、「研究」を行ってきました。最初は赤穂市民病院という急性期病院へ就職して2年間臨床をしました。赤穂市民病院では目の前の仕事をこなすのに精一杯でした。印象に残っているのは、昔は理学療法士もすごく少なかったので、整形外科、脳外科、内科の先生から「治療後、手術後の後療法として理学療法がしっかり機能してもらわないと困る」ということでたくさんのことを教えてもらいました。外科の先生から手術について教えてもらい、看護師さんたちも「病院に若いのが入ってきた」という感じだったので、温かい目で見守ってくれていたと思います。理学療法士が少ない時代から増えていく過程と私が平成11年に養成校を卒業して、成長していくことが相まって、自然に成長できるような社会的な流れがあったのかと思います。

その後、縁あって母校である広島県立保健福祉大学(現、県立広島大学)で助手・助教として、約7年間勤務しました。県立大学の時は研究のイロハを勉強して、助手として事務的な仕事もして、学生に一番近い立場として学生に関わることができました。今また教員になって思うのは教員としての素地がこの時にできたと思います。

その後、臨床をしたいと考えている時に広島市立総合リハビリテーションセンター(現、広島市立リハビリテ―ション病院)を開設するという話を聞いて、ゼロから病院を立ち上げることに関わることは貴重な機会だと思って、職場を移って、約7年間勤務しました。職場を移った時が理学療法士9年目でしたので、社会人としても年数を重ね、自分より年下が増えていく状況で、それまでとは違った役割を果たしていかないといけないという状況でした。一生懸命頑張ってよかった部分もあれば、気負いした部分も多少あったかもしれないです。そういう中で他の職員と一緒に「ゼロから一緒にやっていこう」と気概を持ってやったことは非常にいい経験になったと思います。

もう少し臨床をしたかった思いもありましたが、縁あって再び教育の現場に戻って、広島都市学園大学で教鞭をとっています。この大学には年間に60、70人の学生が入学して、卒業していきます。60、70人という人数は冷静に考えるとすごい人数で、その教育の少しでも支えになれば、ゆくゆくはこの業界の底上げにも直結するのかなと思っています。

本務とは別に、広島県立保健福祉大学に入って、1年経った時から広島県理学療法士会に関わっています。当時はまだ学術局と教育局が一つの局で、一部員として新人教育プログラムの研修会によく行って、講師のスライドの準備をしたりしていました。それからずっと今に至るまで広島県理学療法士会の活動を継続しています。これは無償のボランティア的な仕事ですが、責任が重い仕事でもあります。やりがいがある面と大変な面の両面がありますが、広島県理学療法士会という社会活動をずっと行えてきたことも今となれば自分にとってプラスになっていると思います。

視点が広がることで共通点が見えてくる

臨床、教育、臨床、教育っていう経歴を積むことで視点が広がったと思います。臨床も、教育も、患者さんに関わることも、学生に関わることも、何かできなかったり、わからなかったりする人に関わるということでかなり共通している部分があるので、よい臨床家はよい教育者になれるし、よい教育者はよい臨床家でもあるのだと思います。

臨床で患者さんを診る時も、臨床実習で学生を担当することも「何かできないことを一緒にする」、「何かできないことをできるように取り組む」という点では臨床と教育の間に共通する点があると思います。

患者も学生も、どちらも退院してみないと、卒業してみないとわからないというところはありますが、将来に向けて基礎的なことを一緒にするという点で相当共通する部分があると思います。視点が広がるというのはそれらの共通するところが見えてくることなのだと思います。

研究は困ったことを解決するためのプロセス

研究はエビデンスレベルによって研究のランク付けがされたり、質の高い研究ということを思い浮かべるところもあるでしょうが、自分がわからないことや混沌としたことを整理することだと思います。実際に臨床で患者さんを診療していると、よくわからないままやっていることや実際に明らかになっていないことがたくさんあります。つまり、やってみないとわからないことを実践してみて、変化や結果を形に残すことだと思います。その過程は臨床でも、教育でも一緒だと思いますし、別の職業でも一緒なのだと思います。医療の世界は医師の流れを汲んでいるところもあり、臨床でも研究は重んじられる傾向がありますし、結局、自分の目の前の患者さんは自分でしか調べられないので研究は必要だと思います。

自分が患者さんになった時のことを考えると、ちゃんとしたデータを持っていて、それが頭に入っている理学療法士に担当してもらうということは安心感につながると思います。理学療法をする前に「やってみないとわかりません」と言われるよりも、これまでに何割くらいの患者がどれくらいよくなって、何割くらいの患者がよくならなかったのかということを具体的なデータを用いて説明してくれたらわかりやすいです。

研究には発表する、論文を書くということもありますが、実際に患者さんへ説明する際にもデータを持っているか否かでは随分変わってくると思います。研究の視点があれば患者さんにももっと踏み込んで説明したり、介入できると思います。

最近、危惧することは理学療法士がわからないことを自分で調べてみるとか、研究するという意識が低くなってきているような気がします。研究の質、エビデンスレベルが高いものということが求められていて、それをやっていくことは大事なのですが、それとは別の視点で自分のわからないことを調べてみたいという研究がもっと増えたらいいと思います。それは本当に現場で困っていることを暴露できるようなことにつながると思いますし、そのような研究があってもいいと思います。それが例え、エビデンスレベルが低くとも、現場の問題を見つけ出そうとする研究なので、そのような研究を温かい目で見ていかないと非常に薄っぺらいものを一生懸命に研究するということになると思います。意義があることに対して議論をして、内容を深めていく必要があると思います。

学会で多くの人と意見交換を

職場以外の理学療法士と意見交換をすることは自分の視点を広げることにつながると思います。

今年の9月に第31回中国ブロック理学療法士学会が「分科」と「包括」を学会テーマに開催します。

「分科」とは物事をより細かく、専門的に追求していくことで科学的根拠に基づいた理学療法の確立や理学療法の効果検証を行うことです。「包括」とは物事をより広く、総合的に捉えていくことで地域ケア会議への参加促進や地域包括ケア病棟での効率的な理学療法の提供、理学療法士の視点を活かした病棟マネジメントを行うことです。

これからの理学療法士は両方の視点をバランスよく持つことが大事だと思います。

事前のアンケートでは「分科だけでダメで、包括だけでもダメ」という意見が多い一方で、「両者をバランスよく広い視野を持って仕事をしていくことは難しい」という意見もあり、多くの理学療法士が危惧するような結果が出ています。

一般演題もうれしいことに多くの方から登録をいただき、量的な研究や症例報告などバラエティに富んだ85演題が集まりました。

この学会では自分とは違う視点を持った理学療法士の話を聞いて、参加された方がいろいろなことを考えたり、行動するきっかけになってもらえればと思います。

2日間開催となりますので、どちらか一日だけでも参加してみてください。

第31回中国ブロック理学療法士学会

学会参加は事前参加登録が便利でお得です。

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