SPECIAL INTERVIEWー人と人とのつながりを大切にする広島県理学療法士会の運営を目指してー

SPECIAL INTERVIEWー人と人とのつながりを大切にする広島県理学療法士会の運営を目指してー

人と人とのつながりを大切にする広島県理学療法士会の運営を目指して

公益社団法人 広島県理学療法士会
会長 久保 高行

子供の頃の経験から理学療法士を志す

私は北海道の旭川の出身で小学校6年生のスキーをしている最中に、足を骨折しました。その時に整形外科の病院に入院して、理学療法士に診てもらったことがあります(当時、理学療法士が北海道に約60人、全国で約1,300人しかいない時代です)。関節可動域運動や筋力増強運動を行いました。中学校、高校と進学しても、その時の記憶が頭のどこかに残っていて、職業としてこの仕事をするなら国家資格が必要ということで、理学療法士を目指して雪国の北海道から南国の高知県へ行きました。

昔はいい時代だった!?

私が専門学校を卒業して最初に就職したのは、高知県の整形外科の単科病院でした。当時は後療法が始まるのが非常に遅 く、患者さんの関節が拘縮しているので、「理学療法は痛い、つらい」という印象で、患者さんが我慢して当然みたいなところがありました。理学療法室に患者さんが来て、理学療法士が関節を動かすと、患者さんの声が出たり、涙を流したりすることがまかり通っていました。今は手術方法が進歩して、後療法の開始も早いので、患者さんの機能回復やそのスピードは目に見えて速くなったと思います。今の20歳台の理学療法士には想像することが難しいかもしれませんが、昭和時代の病院は患者さんが数か月~数年入院していることは珍しくなく、長期入院している患者さんがたくさんいました。昔を振り返ってよかったことは在院日数が長く、病院も急性期から生活期まで一つの病院でやっている病院が多かったので、患者さんに長く関わることができました。患者さんを担当して、退院するまで1年から1年半くらいの期間がありました。その中で自分が行った理学療法によって、患者さんがどんな経過を辿っていくのか、どんな結果が起こるのかが 目に見えてわかりました。そのような経験があると多くの患者さんは病気になったり、手術を受けることが初めての経験なので、「今は全然動けない状態だけど、歩けるようになるために、地道に可動域運動や筋力増強運動をしよう」、「自宅退院に向けて、退院前には階段昇降の練習やお風呂に入る練習をしよう」など患者さんの将来に向けて、アドバイスしつつ、一緒に頑張ることができました。

今、危惧すること

2000年から介護保険制度が始まって、医療機関と介護施設は分かれ、同時に回復期リハビリテーション病棟も始まり、急性期、回復期、生活期の病期別分類が進みました。そこから、私たちの仲間である理学療法士が一気に増えました。そのため、それまで行われていた理学療法とは異なり、病棟でのADL練習、365日リハビリが始まったことに戸惑いを感じたことを今も覚えています。今は病院の機能分化も進み、疾患別リハビリテーションで臓器別に分かれて、患者さんの理学療法を担当することで、優先順位の高い分野の知識や経験は増えていき、スペシャリストにはなれるかもしれないですが、急性期のことしか知らない、回復期のことしか知らないなど偏った理学療法士が増えていく傾向に あるのかと思います。例えば、急性期の理学療法士は退院した患者さんがどんな生活をしているか知らない、訪問リハをしている理学療法士だと患者さんが、どんな病気でどんな治療・手術を受けて自分の目の前にいるのかわからないということ になるのではないかと思います。これでは自分が行った理学療法の結果やその結果が何につながっていくのかがわかりにくいと思います。そのため、理学療法士の独りよがりの理学療法になる可能性があることを危惧しています。

理学療法は人の人生に関わる仕事

理学療法士が増加するにつれて、医療機関以外にも理学療法士が勤務するようになり、理学療法士の職場や業務は多様化していると思います。NICUで赤ちゃんに関わる者、発達に問題がある子供に関わる者、クラブ活動でスポーツをしている中高校生に関わる者、手術後に患者さんに関わる者、健康増進に関わる者、介護が必要な方に関わる者、起業する者など。人の人生の中にはいろいろな段階がありますが、理学療法士は身体機能や動作の専門家なので、いろいろな段階に関われる可能性があります。世の中にはたくさんの職業がありますが、そのような職業はあまり多くはないと思います。そういう意味では理学療法士にはまだ多くの発展する可能性があると思います。

人と人とのつながりを大切にする広島県理学療法士会

昔は理学療法士が少なく、本や論文も限られたものしかなく、研修会も本当に少なかったです。当然、インターネットもスマホもない時代。担当したことのない疾患や症例について調べたくっても調べようがないので、手当たり次第に知っていそうな人に電話をかけて聞いて情報を集めました。そして、とにかく患者さんと向き合って、一生懸命にやるしかなかった。そんな中で何か情報を得よ うとすると人とつながっていないと情報を得ることができなかった。研修会に行くことや職場以外の理学療法士とのつながりを持つために広島県理学療法士会(以下、県士会)に入ることは何の疑いもなかったです。最近は、理学療法士も増えて、インターネットにもスマホで簡単にアクセスでき、自分が求めている情報にたどり着ける世の中だと思います(民間会社の研修会も多く、開催されています)。そういう点では若い理学療法士にとって県士会に入るメリットを感じにくいかもしれないです。 しかし、県士会は会員に対して、情報提供のみをする団体ではなく、理学療法士が急激に増加する中で理学療法士の全体の質を保証することが大きな役割だと思います。理学療法士が変わっても、病院が異なっても一定水準の理学療法を患者さんに提供し、効果を出せることが理学療法士の団体として求められていると思います。そのためには会員の生涯学習を段階的に支援することは多くの理学療法士の質を向上させることにつながりますし、それは広島県民の健康に寄与することだと思います。県士会の会員の年齢構成は20歳台、30歳前半の方で過半数を超えています。多くの会員がまだ成長段階で知らないこと、経験していないこと(理学療法や仕事以外のことも含め)が多くあると思います。県士会にはいろいろな職場や年齢の方がいますので、自分と他者との比較ができますし、学ぶことも多いかと思います。また、さっき言ったように病院や職 場が機能分化をしていけばいくほど、患者さんの経過を把握しにくくなり、病期のつながりが見えなくなります。自施設だけで急性期から生活期までのすべてのことを経験することは難しい時代だと思います。自施設で経験できないから他施設の理学療法士とのつながりは大切になりますし、そのつながりの中でしか得られないものがあると思います。

今、若い理学療法士に 伝えたいこと

県士会には様々なロールモデルとなる理学療法士がいると思います。例えば、若くても認定理学療法士を取得して、100人の前で講師を務めている理学療法士もいますし、高校野球のメディカルサポートに関わる理学療法士、介護予防事業を行う理学療法士もいます。このような仕事や役割は職場の中だけでは経験できないことだと思います。理学療法士の知識や技術を活かしていろいろな活動をやっていきたい方は是非、積極的に県士会の活動に参加してみてください。また、そのような活動を通して理学療法士が社会的に尊い職業であることを自覚して、それを大切に育み、社会から永続的に必要とされる職業であり続けましょう。

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