【スポーツには人を元気にする力がある】 (広島大学病院スポーツ医科学センター 平田和彦先生に聞く)

【スポーツには人を元気にする力がある】 (広島大学病院スポーツ医科学センター 平田和彦先生に聞く)

 理学療法士が活躍する分野は、理学療法士の増加とともに医療現場だけではなく、介護、スポーツ、教育、産業など様々な分野に多様化しています。理学療法士を目指すきっかけは人それぞれのストーリーがあると思いますが、多くの人はスポーツをきっかけに理学療法、理学療法士を知り、体験し、理学療法士を目指したのではないでしょうか。今回は、広島大学病院スポーツ医科学センターの平田 和彦さんにお話を聞きました。

まず、理学療法士としてスポーツに関わることになったきっかけを教えてください。

 小児がんを患ったお子さんと出会い、その子の理学療法を担当させていただく中で、スポーツの力を感じたことがきっかけです。その子はつらい入院生活で笑顔も少なく、理学療法士として担当している私も心のバランスをとるのが難しく感じることもありました。そんな中、ある日、その子がサンフレッチェ広島の試合を見に行くことができたんです。その試合で、選手からサインをもらうことができ、後日そのエピソードを僕に話す表情が、僕とリハビリしている時よりもずっと元気で、なにより楽しそうにしていたんです。その時に、スポーツの持つ『人を元気にする力』を強く実感しました。

現在、勤務されているスポーツ医科学センターとはどのようなところでしょうか?

 一般に、スポーツの世界では、医学だけでなく心理学・栄養学・化学・コーチング・バイオメカニクス・ITなどのいろんな領域が関わるマルチサポートが必要だと言われています。しかし、専門的知識を融合した高いレベルの関わりをできる施設は、プロ・アマ問わずほとんどありませんでした。特に、地方でそのような体制を整えるには課題が山積みでした。

 広島大学病院のスポーツ医科学センター (以下、センター)は、そのような要望に応える形で、平成25年9月に開設されました。本センターでは、単に最新の解析装置 (三次元動作解析装置、ジャイロセンサー等)を設置するのみでなく、様々な専門家が知識を出し合い、専門的な関わりを行う場となっています。これまで、広島東洋カープやサンフレッチェ広島など、広島で活躍するトップアスリートも、専門的な支援を求め、他県の施設に行くことも少なくありませんでした。センター開設後は、毎年カープに入団した新人の体力測定を行うなど、チーム力向上に少しずつ貢献しています。また、プロ選手へのサポートが注目されがちですが、アマチュアスポーツであったり、障がい者・高齢者のスポーツの支援にも積極的に参画しています。

 その他の特徴として、オーストラリアのシドニー大学やインドネシアのアイルランガ大学と協定を結び、留学を始めとした人材交流を行うなど、海外との交流も盛んです。実際に、病院所属の理学療法士がシドニー大学に留学して、多くのことを学んで帰ってきました。

広島大学病院スポーツ医科学センター

病院内にスポーツ医科学センターがある施設は珍しいと思うのですが、いかがでしょうか?また、そのメリットなども教えてください。

 中四国のみでなく、全国的にもかなり珍しいものになるかと思います。院内にあることで、医師が動作解析の指示を出した際に、即座に測定が行いやすい環境にあるので、臨床の延長線上で動作解析を行っています。そのため、臨床データに基づいた学術活動も行える環境にあると思います。また、他施設の方が動作解析等、当センターの設備を使用したい時などに、相談にのることも可能です。広島大学の大学院生も積極的に利用しれくれるので、臨床家と研究者の学術交流の場にもなっています。

スポーツ医科学センターの中で理学療法士はどのような役割や業務を行っていますか?

 もちろん、入院患者さんに理学療法を提供する通常の病院業務も行いますし、若い理学療法士の教育も行います。その中で、病院の経営サイドがセンターに柔軟に理解をして下さっているので、病院勤務の理学療法士よりも病院業務をする時間は少なく、医療保険外のスポーツ活動や研究等のセンターの業務に時間を割くことができています。こうした環境は非常に恵まれていると感じています。

 あとは、学内・学外を問わず、いろいろな方との繋がりを持ってお仕事させて頂いています。総合科学部や工学部、教育学部の方とはスポーツをキーワードにアスリートのサポートや学術活動の連携を行っています。その中で他分野の視点を多く学ぶことができました。センターの理学療法士としての重要な使命の中に、様々な分野の方々と強固なネットワークを作りつつ、しっかりとした研究を行い、論文として成果を発信していくことがあります。今後、他分野の先生方との繋がりを通して、積極的に共同研究を行っていきたいです。

理学療法士の目から見たアスリート支援の課題と抱負を教えてください。

 広島で活躍するアスリートが、遠方の施設に通わなくても高度なスポーツ支援を受けられるよう、より充実した環境を整えていく必要があると感じています。まだまだいろんな先生との交流が必要だと思いますし、その中でより充実させていきたいと思います。

 トップアスリートへの支援と同じくらい大事なのが、アマチュアの方々や、何らかの病気によって障がいを抱えた方に対する支援だと考えます。むしろ、障がい者や高齢者が行うスポーツこそ、専門的知識を融合させたサポートが必要です。スポーツに関わるようになったきっかけで話しましたが、スポーツには人を元気にする力があると感じています。障がい者や高齢者の方々がスポーツをすることが『目的』ではなく、そのような活動を通して『その人の生活が豊かになる・今よりも前向きに生活できる』ことがとても大事で、スポーツはそのための『手段』のひとつだと考えます。今後は、センターの活動を通してスポーツという切り口から幅広い知識を持った人材を育てていきたいですし、少しでも社会的に貢献できるように地方自治体とも協力して活動していきたいと思っています。

これから理学療法士を目指す学生やスポーツに関わりたい理学療法士に向けてメッセージをお願いします。

 とにかく学生のうちから、実際の現場に触れることが大事だと思います。広島大学は、学部生を中心に障がい者スポーツに積極的に関わっており、そのような現場では、普段の学生生活とは一味違う活き活きとした眼をしています。学生のうちは何かに熱中し、多くの経験をすることが大事だと思います。こういう活動を通して、自分のできることを広げていってくれる人がたくさん出てくることを楽しみにしています。スポーツに関わりたい理学療法士は大勢いると思いますが、それぞれ置かれる環境や立場によって、実際にどれくらい関われるかは違うかもしれません。そういう意味では、私は非常に恵まれていると思います。ただ、様々なところにスポーツに関わるチャンスはあると思うので、そのチャンスに前向きに向かっていくことが重要と思います。

 これはどんな分野でも共通すると思うのですが、『仕事を楽しむには、その分努力しないと楽しくはならない』と思って、僕はいつも仕事をしています。若い理学療法士が仕事を楽しみながら、いろんな場面で活躍しているのをみるのはとても嬉しいですよね。アスリートの支援やスポーツに関する研究に興味がある方は、ぜひ見学に来てください!!

ページトップ